Vol.3 大切なのは環境との調和

斬新であっても異質であってはならない。
こだわる環境と調和した住まいづくりを語ります。
四代目主人・難波 恭一郎のインタビューです。
2007年頃の古い映像ですが、参考資料として公開いたします。
文字起こしは意訳を含みます。ぜひ動画もお楽しみください。
[赤字] インタビュアー
[黒字] 難波会長
建物をチェックする際に、一般の方はどうしても外観や間取りなど、分かりやすい部分を見ると思うのですが、家の見方をどのようにお考えですか?
私は家の見方というのは、まず周囲とのバランスを見ることだと思います。例えば、山がある地域なら、その風土や勾配に合っているかが大切です。そして軒先がきちんと出ているかどうか。軒先、あるいはそれに代わる庇などが建物から出ていることが家を守るための最低限必要な条件です。特に日本では、夏の強烈な日差しや雨風を防ぐために、太陽光線を遮るのに絶対必要で、この地域なら最低でも85cmは軒先が出ていないと、夏場の強烈な日差しが直接入ってしまいます。軒が出ていないのは家ではなく、ビルの考え方ですね。
最近は軒が出ていない家も多くありますね。
そうなんですよ。デザイン的にスッキリしているとちやほやされていますが、何もないほうが確かに安く仕上がります。ただ、それは家ではなくて箱です。軒や庇がなければ、30年後に壁がそのまま持つわけがありません。30年経って味が出るどころか、「もう潰そうか」となるでしょうね。やはり周囲の環境や町並みに合った屋根勾配というものがあります。
周囲の町並みとの調和も重要ということですね。
その通りです。その地域の風土や町並みに合わない屋根勾配は、どんなに良い材料を使い、良い仕事をしていても違和感があります。例えば、倉敷や児島という地域にはその地域に合った建物のバランスがあります。洋風の家でも同じことが言えます。田んぼの中にプロバンス風の家が一軒だけあったら、やはりおかしいでしょう。そこには勾配のある屋根が似合うと思います。
素人でもバランスの良さは感じ取れるものでしょうか?
感じ取れると思います。実際に私が建てた家について「なんばさんの家は独特な感じがする」「見ればすぐ分かる」と言われますが、異質でケバケバしいおかしさではなく、基本形があり、それをどう崩すかを考えています。だからこそ「なんばさんの家」と分かっていただけるのではないかと思っています。
家の見方として他にポイントはありますか?外観と内観、それぞれどのような視点で見ればよいでしょうか?
外から見る場合はやはり外観のデザインと周囲との調和です。中に入った場合は、まず自分がどう招かれたのか、その雰囲気が大事です。玄関を開けた時の空気や雰囲気が家の印象を決めます。アンモニア臭のするクロスのようなツンとした空気ではなく、木や土のほのかな香りで迎えてくれる家が良いと感じます。土壁など自然素材を使った家は肌で感じる心地よさが違います。私はピンと張り詰めた家よりも、入った瞬間にホッとできる家の方が好みですね。そのホッとする中にも、ちょっとハッとする要素を加えることができると思っています。