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会長インタビュー

Vol.5 バランスの上に備わるデザイン性

住む人への配慮とあくなき探究心が絶妙なバランスを生む。
プロの目から見た良いデザインとは何かを語ります。

四代目主人・難波 恭一郎のインタビューです。
2007年頃の古い映像ですが、参考資料として公開いたします。
文字起こしは意訳を含みます。ぜひ動画もお楽しみください。

[赤字] インタビュアー
[黒字] 難波会長

一般の方が見て良い家と、プロが見る良い家はまた異なりますしね。どこを称して良い家というかは難しいところです。

社長ご自身は他社の見学会にもよく行かれるのですか?

行きますよ。頻繁に行っていますね。その時にはまず外観のバランスから見ます。特に窓の高さや位置は、家全体のバランスを大きく左右します。考えて設計されている家は、窓の位置ひとつにしても非常に配慮されています。また、電気の引き込み線やクーラーの配管が見えないような配慮があるかどうかも重要です。新築ならそういった配慮がなければおかしいと思いますね。

個人的な好き嫌いはもちろんありますが、自分が好きでない外観でも理屈に合ったデザインをしている家を見ると「この人はできるな」と感心します。逆に、自分の好きな雰囲気の家を見て「自分ならこうするな」と感じることもあります。家に入った時も、柱やドア、照明などを見て、なぜこの家が格好良く感じるのかと自問します。例えば外観であれば、塀の瓦ラインと屋根の瓦ラインが連続する横の流れが格好良いと感じたり、屋根の出の力強さがうまく表現されていると感じたりします。そのような工夫を覚えておいて、自分の家づくりにも取り入れるんです。

家の中に入っても同じことです。「お、かっこいいな」と思ったら、その理由を考えるんです。例えば、天井に照明器具を埋め込んで、嫌な出っ張りをなくしてスッキリさせていることに気づく。あるいは、本来必要な柱をあえて見せないように設計してある場合があります。一般的にはここに柱が必要なのに、なぜないのか。それは意識的に設計されたもので、そこに計算と配慮があるんです。そうした家を見ると感心しますね。ただ単に窓や柱を配置するだけなら誰でもできますが、配慮があるかどうかで家の良し悪しが決まると思います。

窓の位置ひとつでそこまで違いが出るのですか?

そうです。窓の高さや位置が変わるだけで、部屋の雰囲気や外観が劇的に変わります。窓を高い位置に設置するだけで室内は落ち着いた印象になりますし、外から見た時も窓のラインが美しく整っているかも見ます。そういう細部にまでこだわりが見られると、「この人はすごいな」と感心します。設計士であれ大工であれ、家を建てる人は皆、そうした意識を持つべきだと思いますね。計算されているのに、その計算を感じさせず、自然と「いいな」と思わせる家が本当に良い家です。強度や耐久性などの基本を超えたところで、デザインの良し悪しが見えてくるんです。

なんば建築工房はデザインもこだわってらっしゃるんですよね。

それは家ですから絶対です。いくら腕が良くても、昔ながらの同じパターンの家ばかり建てていては魅力がありません。部屋の広さに対して柱の太さが適切であることや、敷居や落し掛け、床框の寸法など、昔から培われてきた美しいバランスが大切です。柱の太さによって部屋の広さや天井の高さも自ずと決まります。そんな伝統的なバランスを理解した上で、「ここに柱がないのに妙にバランスが良い」と感じさせる意識的な設計を見ると、本当に感心しますね。「これは参った、すごいな」と思います。そういう細部まで知り尽くした上であえて見せない工夫をする人は素晴らしいと思います。

最近の設計士の中には、庇や太陽光のような実用性を無視してデザインばかり重視する人もいますが、それでは本当の意味で良い家とは言えません。デザインはもちろん大切ですが、それは機能性や理屈に合ったものでなければいけません。予算が限られている場合は、無理に凝ったことをする必要はありません。普通にきちんと収めればいいんです。ただ、細部に配慮した設計にはどうしてもコストがかかります。しかし、それが嫌味なく自然に「良いな」と訴えかけてくる家こそが、本当に良い家なんですよ。柱が見えても見えなくても、ありふれた普通の家でも、飽きが来ず、年月を経るほど味わいが増す家こそが最高の家なんです。